居酒屋 七々
(2021年9月取材)
「あそこの店に行けばほっとする」そんな場所であり続けたい。
居酒屋 七々
店主
倉田 登志子さん
東武 曳舟駅前で「居酒屋 七々」を運営されていらっしゃる倉田さんは、お客様のお母さんの様な存在です。お店を始めてからこれまでについてや、お客さんとの交流、地域に対しての想いなどを聞かせていただきました。
最初は自分も周りもすぐ潰れると思ってました
七々はもう何年やられてますか?
今年で25周年になります。
もともと曳舟駅の目の前にお店があって(現かぶら屋の場所)そこで22年、今の場所に移転してから3年です。
もう老舗ですね。
お店が続いた秘訣を教えてください
私だってこんなに続くと思っていなかったから、秘訣はちょっとわからない(笑)。 すぐ潰れると思ってたから、開店して半年は家族にも友達にも誰にも教えてなかったんです。
それがある日たまたま実の兄が来店してしまい、「俺たちが知らないのに協力なんかできないぞ」って怒鳴って帰ってしまった。それでようやく周りの人に伝えました。
お店やってるのを伝えてすぐつぶれるのは嫌だから言わなかったのよ。
開業してすぐに近所のお蕎麦屋に挨拶に行ったら、そこのおかみさんから「あそこは何をやっても潰れる」と言われたのもありましたしね(笑)。
家庭料理と魚料理で25年
周りに秘密で居酒屋を開業して半年バレなかったのも、難しい立地でお店が続いたというのもすごいですね。
やはりそういう立地なので近所の人もすぐ潰れるだろうと見ていたんだと思います。だから、最初はあまり地元の人は来なくて、電車の乗り換えのお客さんとか、近くの会社に勤めている方がよく来てくれました。
開店当初はゆっくり飲んでいかれる50代くらいのお客さんが多かったです。
そんなに立派な料理も出していなくて煮物とか焼きそばみたいな家庭料理、あとはもんじゃ焼き。皆さん何を出しても食べてくださってありがたかったです。
七々の料理が美味しいという評判はネットでも目にします。
そんなに手の込んだものではないんですけど、喜んでくれるのは嬉しいですね。
そうそう、すごく苦労したのが魚料理。開業して半年くらいは魚料理を誰も頼んでくれなくて、たくさん捨てました。「女が魚さばくの?」と言われてしまう時代でもあったし、私の技術が足りなかったのも原因だったと思います。
それで、日曜日だけ知り合いの男性に来てもらって魚を調理してもらったり、親戚の魚屋に電話で魚の扱い方を教えてもらったりしました。ようやくお客さんが魚料理を頼んでくれるようになるまで1年かかりましたね。
今でも技術はないと思っているのでせめていい魚をということで、千住市場の決まった魚屋さんで仕入れています。そこももう25年の付き合いです。
若い人も開店当初からも常連も一緒に楽しめるお店
厨房に立つ倉田さん
どんなお客さんが多いですか?
25年でだいぶ変わりましたね。最初の頃は就職で上京してきた東北や北陸、北海道の人が多かったです。お酒も東北のお酒を多めに仕入れていて、今みたいに九州の芋焼酎なんかはあまり置いてなかった。最近は地域に関係なく関西や九州、沖縄のお客さんも増えました。
お客さんもだんだん若い人が増えてきて入れ替わりはあるんですが、それでも10年以上通ってくれている人は結構いるし、開店当初から25年通ってくれている人も一人います。
25年はすごいですね。
いつもカウンターで飲まれるんですか?
そうね。このカウンターに座ってね。店で知り合った人とお喋りしたりしながら飲まれてますよ。うちの店は一人客が多いから、ここに来れば誰か顔見知りの人がいるということで憩いの場になっていると思います。
店もこれだけ長くなってくると、人生の最後のお手伝いに関わることもあって。区役所の緊急連絡先にうちの店の電話番号を書いているお客さんもいます。高齢の常連さんには「私に100万円くらい預けておきなさい。何かあったときは全部面倒みてあげるから」と言ったりもするわね(笑)。
実際に身寄りがなくて亡くなった方のお葬式をやったこともありました。隣のスナック チャチャもうちで経営しているんですが、そこにお坊さんを呼んでね。「スナックでお経あげたのなんて人生初めてだ」とお坊さんは言っていました。
人も町も元気になってほしい
何か今後の目標はありますか?
30周年まであと5年、元気で頑張りたい気持ちはあります。エネルギーの源はやはり料理を作ること。お客さんも若い人が増えているので、美味しい家庭料理を食べさせてあげたいと常々思っています。コロナの緊急事態宣言下だとお酒は出せませんが、せめて「あそこの店に行けばほっとするものが食べさせてもらえる」という場にはしていきたいです。
地域に対する思いがあれば教えてください。
新しいマンションが建って若い人が増えているから、子供たちに地域の催し物に参加してもらいたいなと感じています。
この地域は6月に雨乞いのお祭りがあり高木神社で御神輿が3台出て、神社の社務所に行けば誰でも御神輿をかつげる。ぜひ曳舟の地域をもっと楽しんでもらい、住んでいる町に愛着を持って欲しいです。
店舗情報
〒131-0032 東京都墨田区東向島 2丁目15-11
電話 03-3610-0882
営業時間 17:00〜