丸源飲料工業株式会社
(2021年7月取材)
日本の外食文化の創り手でありたい。
丸源飲料工業株式会社
https://www.marugen.com/
代表取締役 社長
阿部貴明さん
代表取締役 専務
阿部 浩明さん
外食産業を力強く支える業務用食材を70年以上の長きにわたって開発製造し続けているのが今年創業105年を迎えた丸源飲料工業です。
コロナ禍で変わる日本の外食文化ですが、外食産業を影で支えるサプライヤーとしてどのようなビジョンで事業に取り組んでいるのか。
代表取締役社長の阿部貴明様(以下社長)と代表取締役専務の阿部浩明様(以下専務)にお話を伺いました。
時代にマッチしたSNS映えするモナジュエルがヒット
現在、力を入れている製品について教えてください。
社長:当社は「もっとたのしく、もっとおいしく。」をテーマに製品開発を行っています。その中で特に「たのしく」にフォーカスして近年ヒットしたのがモナジュエルです。キラキラでカラフルなまるで宝石のような全八色のゼリーで、写真に撮るとすごく綺麗でSNS映えします。
専務:モナジュエルはキャラクターやスポーツチームなどのコラボレーション展開も盛んです。全八色あればキャラクターカラーやチームカラーを大体カバーできます。さらに特徴は黒色を用意していること。黒がテーマカラーのキャラクターやチームはすごく多いんですが、飲料で黒を表現できる製品は少ない。モナジュエルのレモンブラックは黒のニーズに応えることができ、おかげさまでヒット商品となっています。
社長:当社の製品はおいしいと評価されることは多かったですが、女の子がかわいいと喜んでくれる商品はこれまで一つもなかった(笑)。若手社員のアイデアを取り入れSNSや写真が盛んな世の中の流れに合わせることで、モナジュエルは初めて一般の人にも認知される製品になります。当社の「もっとたのしく、もっとおいしく。」をわかりやすく体現する存在となりました。
カラフルな色で楽しませてくれるモナジュエル
「もっとたのしく、もっとおいしく。」に込めた想い。
なぜ「もっとたのしく、もっとおいしく。」をテーマにしているのでしょう。
社長:おいしいはもちろんとして楽しいことが外食の本質的な価値だと考えるからです。私たちが業務用の飲料や食品を提供している外食産業は、非日常だったり家庭ではできない食の体験をできる場です。その体験が外食の楽しいにつながります。
業務用というとコストや効率性を重視する方もいらっしゃいますが、当社はあくまでお客様の感動や楽しさにフォーカスした製品開発を行っています。
専務:人が外食をする動機は、単にお腹を満たすということだけでなく誰かと一緒に楽しい時間を過ごしたい、美味しいものを食べたいということだと思います。だから、当社が開発する商品は、非日常の空間で喜んでもらえるような驚きのある製品である必要があるのです。
時代の先端を行き、アイデアを技術で表現する。
事業内容についてお聞かせください。
専務:1916年に当時最先端の飲料だったラムネの製造販売を始めて以降、時代のニーズに応える製品を開発してきました。現在は主に外食産業の業務用に使用する飲料やシロップ、トッピング、カットフルーツなどの開発製造を手掛けています。1974年には今でも業務用や贈答用に人気が高いチョコレートドリンクをリリース。1998年にはフローズンスムージーベースをリリースしました。どちらも発売当時は日本にほとんど飲む習慣がなかった商品です。
社長:チョコレートドリンクは液体のポーション形式の製品です。これならお店ではお湯に溶かすだけで提供できます。チョコレートを液体の状態に保つ技術は当社のコア技術で、大手でも未だに実現できていません。
専務:企業向けのプライベートブランド(PB)商品開発も主力事業です。当社がPBで作った業務用製品によってその先にあるメニューをどう表現するかを大切にしています。お客様の考えや思いをメニューで実現するのが当社のPB開発のコンセプトです。
社長:良く話すのが「アイデアを技術で表現する」ということ。当社の技術や経験であれば「本人以外食べたことがない海外の美味しいものの味」を形にすることが可能です。お客様のアイデアを形にして、開発と量産できるのが丸源飲料の価値といえます。
昔懐かしいトーキョーサイダー
上段の商品がモナジュエル、下段がチョコレートドリンク。
墨田の皆さんに親しみを感じてもらうために。
年4回の地域還元セールを地元である墨田の皆さんに向けて行っていらっしゃいます。こちらの目的はなんでしょう。
社長:地域還元セールは「当社が何をやっている会社なのか、地元の皆さんに知っていただきたい」思いから始まった取り組みです。昭和53年までは製造工場も現在の本社だったので、甘い匂いも漂いますし何をやっている会社か自然に知っていただけていました。
しかし宇都宮に工場が移転してからは一見して事業内容がわからない会社になった。街が発展して新しい住民も増えていく中でそれはまずい。そこで、当社が開発している商品をご覧いただきお得な価格でお分けすることで、当社に親しみを持ってもらおうというのが狙いです。
専務:地域還元セールはかなり好評でリピーターの方もたくさんいらっしゃいます。道で近所の方とすれ違うと「次いつやるの?」と尋ねられることもあり、地元に浸透してきた実感を感じられ嬉しいです。
社長:また、当社は事業内容が圧倒的にBtoBなので、普段社員が個人のお客様と触れ合う機会がありません。地域還元セールは直接お金をいただいて商品をお渡しすることで、社員が製品の価値を改めて実感できる貴重な場となっています。
丸源飲料工業が新たな朝食文化を作る
コロナ禍で外食を取り巻く世の中の形も大きく変わりました。今後のビジョンを教えてください。
社長:現在見据えている新しい可能性が朝食です。日本では朝ごはんに大きくお金をかけてゆっくり外で食べる人はあまりいません。データ上でも、日本は例えばカフェ業態での午前10時前の需要は10〜20%程度ですが、アメリカは60%を超えます。
専務:外食に対する捉え方も違います。日本はハレの日は外食をしますが、海外だと普通の日がむしろ外食のケースもある。今後日本の家庭の可処分所得が増えれば朝食など普段は外食をし、ここぞという一世一代のイベントでは前日から仕込みをして家庭で豪華な手料理を食べるという転換もあり得るでしょう。
社長:働き方の多様性や共働き家庭が当たり前になったことで、朝食を外食でというニーズは今後増えないわけがないと考えています。何があれば増えるのか、外食での朝食文化が喚起できるようなメニュー開発をしていく。「丸源飲料工業が新たな朝食文化を作る」それが今後の夢のひとつです。