有限会社 日の出屋酒店
(2026年3月取材)
地域の便利屋さんとして、憩いの場を提供する酒屋さん。
有限会社 日の出屋酒店
代表取締役
小出 昭さん
日の出屋酒店を始められたきっかけはなんでしょうか?
父から譲り受けたのがきっかけです。 うちはずっと酒屋で、父が3代目ですね。 福井からこの地に来てずっと酒屋です。
昔からのあるあるですよ。 いわゆる「長男が家業を継ぐものだ」みたいな育てられ方をしてきたので、おのずと中学、高校に行ったあとは継ぐことになるんだろうなという感じでしたね。
学生の頃は、お中元とお歳暮の時期は繁忙期でしたから、やっぱり手伝いをしないといけなくて、友達と遊ぶのを我慢してずっと手伝いをしていましたね。
ご家族との思い出の中にずっと「酒屋」というものが中心にあったんですね。
ああ、そうですね。 今でも懐かしく思いますね。家族と親父の弟さんもいて、配達は親父の弟さんから教えてもらいましたね。御用聞きのコースだとか、1軒1軒挨拶の仕方とか。
学校を卒業して、一応一度は外の飯を食わないと、ということも自分でもわかっていたので、酒問屋に就職して、それから程なくして実家の酒屋に戻ったんですよね。
酒屋を継ぐというのは嫌ではなかったんですか?
なんかね、ずるかったところがあってね。中学の時かな、家が忙しい時期に友達を呼んで騒いでふざけていた時に、「忙しいんだから店を手伝え。 将来継ぐんだから、そのつもりでいろ」と言われた時に、「あ、じゃあ勉強しなくていいんだろうな」「他にすることを考えなくていいなら楽だな」と思っちゃんたんですよね。 当時から勉強が嫌いでしたしね。
昔からの「酒屋」とは、今はずいぶんと変わってきているのではないですか?
そうですね。 ガラッと変わりましたね。 お店も立て替える前は、もっと広くて、奥に倉庫がありました。 そこに木製のお酒の10本入りの箱を積んでいましたね。 子供の頃はそれに登ったりして、よく怒られていました。
昔はそんなふうに在庫を持って商売をしていましたが、段々と日本酒を飲む方も少なくなりましたしね。 あとは、ディスカウントショップや薬局でも、どこでも買えるようになってしまいましたから店も様変わりしましたね。
ただ、人が集まる時や熨斗紙をつけて欲しいとか、1本包装して神様におそなえするんだとか、そういうお客様は、やっぱりうちみたいな店がないとね。 そういうご注文は、途絶えませんね。
まあ、色々と取り入れてやらせてもらっています。 「三代目 茂蔵豆腐」というお豆腐関係の商品を置いていたり、宅急便の取次。 宝くじ。 あとは駄菓子。 裏に公園があるので、近所の子供達が遊んでいる時に寄ってくれるようにしていますね。 駄菓子屋さんもなくなっちゃったから。 ここにいながらできることは、あれもやってみよう、これもやってみようと、酒屋業務は残しつつ、できることを増やしています。
先ほどお話しした通り、うちでは駄菓子を置いているんですが、消費税はつけていないんですよね。 なぜかというと、子供達がお小遣いで100円持っていると、「30円と40円のお菓子を買ったら、じゃああと10円のが3つ買えるぞ」と数の計算がしやすいんですよ。 消費税をつけちゃうと、子供たちは計算ができづらくなってしまうから、額面通り計算できるように駄菓子は消費税つけずに販売しています。 昔に駄菓子屋さんに行ったような感覚で買ってもらえるようにしているんですが、面白いのが、最近の子供達はキャッシュレスなんですよね。 「ペイペイで払います」とか。 そういうところが昔から変わって面白いところですね。
この辺りも、お豆腐屋さんや駄菓子屋さんがなくなってしまって、その役割も担っていらっしゃるんですね。
そんな役割を担っている中で、これからこの街がどんな風になればいいなとお思いですか?
これからどんどん新しい人が入ってくるようになる。 古い家が1件なくなると、建売が3棟立つんですね。 それに加え、民泊という要素も加わってきて、そこに新しく住む人と、旅行でくる外国人の方々などでどんどんと多様化していく。
そうすると地域の町会などで、そういう方々を上手く仲間に巻き込んでいかないと、どんどん孤立化するし、新しくきた人たちはそこに住む歴史がないので、そこに仕事で帰ってきて、寝るためだけの場所にしかならない。 その場所に何か意味付けをする町会とか、元々ある組織との関係を上手く作ってやっていくのがいいのではないかな。と思っています。
新しい方でも、ふらっといらっしゃって、「こんなところにタバコやさんがあるのは助かる」と言ってくださる。年齢関係なくこの場所に来た人に、ふらっと立ち寄ってもらえるようになったらいいと思いますね。できることはなんでもしてあげたいって思うので。
この店を、みなさん肩肘張らずに、お気軽に立ち寄っていただけるような場所になるようにしていきたいですね。 コンビニのようにただ商品を見て回るだけのお店じゃなくて、人とのやりとりを大切にしながら、お店をやっていきたいですね。
ずっとやってきてよかったことというのはありますか?
ここ4、5年で酒屋をたたんでしまったお店がいくつかあって、その周辺のその酒屋さんを使っていた人たちが困って、今度はうちに来てくださるんですよね。もうなくなっちゃったら終わりなんだな。と思って。
イベントがあって、缶ビールとか酎ハイとか用意してもらえない?って、ご依頼があるんですが、うちがお断りすると、お客さん自身がそれぞれどこかに行ってなんとか材料を調達するしかなくなっちゃうんですよね。 昔から当たり前にしてきた、お客様がご希望されている場所に、ちょうど良い具合に冷やした状態でお酒をお届けする。 そんな配達スキルを地域の方にご提供する。という当たり前のことが貴重がられているのがわかるので、ありがたいですね。
その誠実さがきちっと皆さんに伝わっているんですね。
5年前に脳梗塞の手術をしたのですが、経過も良好で、手足がきちっと動く。 配達ができる。 商売ができる。というのが喜びで…。 利益よりも人と接する喜びの方が圧倒的に大きくなりました。
大したことはできませんが、こんな私でよろしければ。という感じですよ。
店舗情報
有限会社 日の出屋酒店
東京都墨田区八広1ー37ー10
TEL:03-3617-5311
営業時間 11:00~20:00 (日曜定休)
https://r.goope.jp/yahoo7731/