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喫酒 千日紅

(2025年10月取材)

子供の頃に周りの大人に教えていただいた
 人情溢れるこの町の文化を次の世代に残していくために、
 店を通してたくさんの人と関わり、貢献していきたい。

喫酒 千日紅

喫酒 千日紅
多田 翔さん

「喫酒 千日紅」を始めたきっかけ

 
 シンプルにお酒が好きだったからですね。
 たまたま母の知り合いが経営していたカフェを閉めると聞き、「面白そう! 僕が使います」と居抜きで店を使わせてもらうことになりました。
 僕はサラリーマン時代から、「お酒とタバコだけで出世した」って言い張るぐらい会社の先輩たちに可愛がられ、当時の僕の給料では飲めないような高いお酒を飲ませていただいていました。その経験を形にできないかと考えたことがきっかけでした。

未経験で何もできないということより、全て揃っているのに、お店をやらない選択の方が怖かった。

やってみないとわからない
 
 物事を始める時には、「ヒト」「モノ」「カネ」が必要だと言われます。 譲り受けたお店は、僕1人でもできる規模のスペースだったので「ヒト」は揃っている。 「モノ」も飲食を行う設備は整っている、当時は貯金も少しあり「カネ」もある。 つまり、店を始めるのに全て揃っている状態でした。
 でも23歳という若さ。お店をやった経験もないとなると、周りから「無理だ」と散々言われましたね。
 確かにそうだと思うのですが、これだけ必要なものが揃っている中で、お店をやらないという選択をする方が僕には「怖いな」と感じました。 ここまでお膳立てされていてもやらなかったら、多分一生やらない。 ここまで全て揃っている状況も一生に一回あるかどうか。 「これは、やるしかない」と反対を押し切り、お店を始めました。
 おかげさまで周りの方々の協力もあり、もうすぐ10年を迎えることができます。

まあ、しょうがねえから認めてやる

 お店をすることに反対していた両親に認めてもらうには、5、6年かかりましたね。
 僕の中での一番の親孝行は、「自分の親を超えること」だと思っていました。
 父親も事業をしているので、僕が会社に入ってしまうと一生父親を超えられないんですよ。 起業することで父親と同じ立場に立つことができ、「超える」ことができる可能性が生まれてくる。 そのためにずっとひたむきにやってきました。
 なので、父親が「まあ、しょうがねえから認めてやる」って言ってくれた時は嬉しかったですね。

この町の大人や雷親父に育てられた子供時代

この町でいろいろとサポート役をする理由
 
 地元が墨田なので、小さい頃このキラキラ橘商店街でよく遊んでいました。
 子供の頃は、まだ町の人たち同士のつながりが密で、商店街やスーパーで走り回って遊んでいると、「こらっ!」と怒ってくれたり、気になると声をかけてくれる大人たちがいて、僕はこの町の人たちに育ててもらいました。 今も一緒に物事を作りながら、いろいろと教えてもらっているところです。
 
 子供の頃に、周りの大人たちからしていただいたこと、教えていただいたことを次の世代に渡して、人のつながり、文化や教育が巡り町が作られていく。
 それがこの地域のいいところだと思っていて、僕もそんなふうに「次はお前たちの番だぞ」と、地域で子供を育てながら、バトンを渡していけるようになりたいと思っています。
 僕が法人会、町会、神社 その他合わせて7つぐらいのグループに参加し、お手伝いしているのはそのためです。
 全部ほとんどボランティアですが、それは自分が楽しいからやっている。 そういうことをするのが昔から好きなんです。

千日紅は、町の人みんなでやっているお店

 母の知り合いから譲り受けたお店を1年前に立ち退きしないといけなくなり、このまま店を続けるか迷った時がありました。
 場所やお店をゼロから探さないといけない。でもそんな予算はない。
 そんな時に、ふと思いついてSNSに「良い場所を知ってたら情報をくれたらありがたいです」と投稿したら、夜には「あそこあるよ」「今度紹介するよ」など連絡が来ました。
 本当にこの地域の方々の助けによって、このお店があるんだなと感じた出来事でした。

千日紅は「人とつながるための手段」

 自分がやりたかったこの町の発展のサポートが出来るようになったのも、この店のおかげ。 僕の場合は店の営業は「目的」でなく「人とつながるための手段」なんです。
 23歳の何の経験もない頃から「お店を地域のためにやりたい」と言っていましたが、「そんなことよりも、店続けられるのか?」と周りの人に思われていました。 笑。
 千日紅がオープンしてそろそろ10年。 今までの僕を見て、「こいつが言ってたことは本当だな」と評価してくださるようになってきたのが嬉しいですね。

みんながファミリーみたいなお店

 千日紅をオープンした当初は、来てくださる方は年上ばかりでした。 最近は年下の後輩みたいな人が来てくれる。 最近この辺りに移り住んできた方達も来てくれる。
 子供の頃から僕を知ってる人、例えば同級生の親とか、おじいちゃん、おばあちゃん。 そういう方も来てくださいます。
 千日紅はカウンターだけのお店。 そんなお店って、皆さん静かに飲んでいるイメージがあるかもしれませんが、うちはお客様同士が顔見知りで、楽しくしゃべって、飲んで、勝手に友達になっている。 そんなお店なので、他のお店とはちょっと違うかもしれないですね。
 僕はそれをそばで聞いて楽しんでいる。 そんな感じなので、僕は仕事をしているという感覚がないんです。仕事というより趣味ですね。
 気張らない雰囲気のお店なので、お客様から「家にいるみたいだ」とよく言われます。
 最近は、お酒があって、楽しくみんなが集まる場所があって、そこに僕がいれば、どこでも千日紅なのかもしれないな。と思うようになりましたね。 笑。

次の世代へ渡せるもの

 僕の起業の経験を、大学で講義をさせていただく機会が何度かあったのですが、いつも勉強は1つのツールであって必ずしないといけないものではないと言う話をしています。 勉強をしなかった僕が起業できて、出世しているわけですから、それも1つの答えだと伝えています。
  そんな話を聞いて興味を持ってくれた子がお店に来てくれて、将来の話や仕事の話をすることもあります。
 そういう子たちが、自分の夢を叶えて育っていってくれるのは、とても楽しみですね。

 店舗情報

喫酒 千日紅

喫酒 千日紅
131-0046 墨田区京島3-2-5(ワインショップ内)
TEL080-4378-0824
不定休、 営業時間:22:002:00
※来店時はご連絡をお願い致します。

アクセス

〒 131-0032 東京都墨田区東向島2-8-5
TEL : 03-3612-5515
FAX : 03-3616 - 3536